小杉湯 三代目 社長

おふろ×リラックス

三代目社長が語る、90年続く銭湯「小杉湯」の魅力と価値【インタビュー前編】

2026-03-10

東京・高円寺にある銭湯、小杉湯。昔から非常に人気のある銭湯として知られ、地元の人はもちろん、遠方から足を運ぶ人も多い場所です。

今回お話を伺ったのは、小杉湯・三代目社長の平松祐介さん(以下、平松さん)です。現在、平松さんはその暖簾を守る立場として、日々銭湯に向き合っています。

また、2024年には原宿へ新たな銭湯を開業し、注目を集めました。本記事は前編・後編のシリーズで、小杉湯のこれまでと、原宿での新たな取り組みについてお届けします。

前編ではまず、高円寺で続いてきた小杉湯そのものの歩みと、三代目としてそれをどう受け止めているのかについて伺いました。

高円寺で生まれ、受け継がれてきた小杉湯の歴史

小杉湯の創業は昭和8年(1933年)。新潟県出身の創業者・小山惣太郎さんが東京都杉並区高円寺に銭湯を開いたことから始まりました。

その後、昭和28年(1953年)、平松さんの祖父が小杉湯を買い取り、事業を継承。祖父を一代目、父を二代目として、現在は平松さんが三代目として銭湯を営んでいます。

祖父は「一旗揚げたい」という思いで上京し、創業者から小杉湯を継承しました。その決断が、今に続く小杉湯の歴史の出発点です。

小杉湯が続いてきたのは、老舗だからではありません。時代ごとに「どうあるべきか」を考え、選択を重ねてきた結果として今につながっています。

また、高円寺という街の中で、小杉湯は入浴の場であると同時に、暮らしを支える生活インフラの一つとしても機能してきました。

家庭にお風呂がない時代には日常的な入浴の場として、家庭風呂が普及した後も、地域の人々が足を運ぶ身近な存在として役割を果たしています。

小杉湯が大切にしてきた「銭湯としてのあり方」

小杉湯は、東京都の認可を受けた「一般公衆浴場」として営業しています。いわゆるスーパー銭湯やサウナ施設などの「その他公衆浴場」とは、制度上の位置づけが異なります。

一般公衆浴場は、地域住民の日常入浴を目的とする施設として、公衆衛生を支える役割を前提としています。災害時には地域の入浴拠点となることも想定されており、小杉湯もその立ち位置を守りながら運営されてきました。

人が集まる理由は、設備の新しさや流行のサービスだけではありません。

「公定価格で誰もが利用できること」「地域の生活を支える存在であること」、こうした“公共性”を前提に続いてきたからこそ、日常の中で選ばれ続けてきたのです。

これが、小杉湯が大切にしてきた銭湯としてのあり方です。

小杉湯が人気銭湯として長く愛される理由

小杉湯が長く愛されてきた背景には、祖父の代から大切にしてきた「きれいで、清潔で、気持ちのいい」銭湯にするという姿勢があります。

三代目の平松さんもその思いを受け継ぎ、訪れる人が心地よく過ごせるよう、工夫を重ねているそうです。

誰でも気軽に来られる銭湯価格や、手ぶらで訪れることのできる手軽さは、地域の人々の日常に自然に溶け込んでいます。

また、二代目の父が行っていた「日替わり風呂」や「季節ごとのイベント」「メディアとしての銭湯」といった取り組みも継続され、訪れる人が楽しめる工夫は欠かせません。

公式Instagramの「おふろカレンダー」を通して毎月さまざまなお風呂を知らせるなど、何度でも足を運びたくなる仕掛けも整っています。

さらに、小杉湯では水の肌あたりや木材の素材感、アメニティやタオルなど細部にまでこだわり、入浴時間を快適に過ごせるよう工夫しています。

こうした日々の積み重ねが、単なる入浴の場としてだけでなく、地域に根ざした人気銭湯であり続ける理由です。

三代目社長・平松さんから見る小杉湯の価値

平松さんは2016年に三代目として小杉湯を継業しました。祖父や父が築いてきた歴史を受け継ぐ中で、平松さん自身も銭湯の価値を改めて考える機会に直面しました。

大きな転機となったのは、「東日本大震災」「コロナウイルス」の2つの出来事です。
東日本大震災では、地域のつながりやコミュニティの重要性を実感したそうです。災害時に人々が安心して集まれる場所の意味を強く感じたと語ります。
一方、コロナ禍では、日常の一部としての銭湯の価値や、公衆衛生を支える場としての役割を改めて認識したそうです。

「小杉湯では90年以上、祖父の時代から通い続けてくださるお客さまがいます。地域に根ざして、生活の一部になっていることは何事にも代えがたいことで、誇りです。」(平松さん)

この言葉からも、三代目として小杉湯を守る思いと、その価値の重さが伝わってきます。

「あり続ける銭湯」という選択

時代とともに、「一般公衆浴場」である銭湯の数は減少する一方、スーパー銭湯などのその他公衆浴場は増加しています。この背景には、高度経済期に家庭の風呂が普及したことがあり、街の銭湯の役割は変化してきました。

しかし、「家の外でお風呂に入る」という行為、つまり入浴文化そのものは、今も日本人の暮らしに根づいているということです。入浴の回数や習慣を大切にすることの価値は、昔も今も変わりません。

一方で、設備の更新費用や高騰するガス代の負担は決して小さくありません。街の銭湯を守り続けるには、多くの努力を求められるのが現状です。

そのような状況の中でも、小杉湯は拡大を目指すのではなく、「続ける」ことを選びました。

“地域に根ざし、生活の一部として存在し続けること”

それは家業としての責任であると同時に、街の文化を支える役割でもあります。ですが、ふとこの姿勢の先に、考えさせられる問いが生まれます。

このままで本当に続けられるのか?

街の銭湯は、確実に減り続けています。そして今、銭湯を取り巻く環境は、これまで以上に厳しくなりました。

  • 震災や災害、パンデミックへの不安。
  • エネルギー価格や物価の上昇、人件費の高騰。

そのうえ、築93年の小杉湯は、建物も設備も老朽化が進み、大規模な修繕は、「いつか」ではなく「いま」、目の前の課題として迫っています。

次回(後編)では、この問いに対する一つの答えとして、新たに原宿で開業した小杉湯原宿の取り組みをご紹介します。

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