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小杉湯三代目が語る、原宿に新しい銭湯が生まれた理由と挑戦【インタビュー後編】

2026-08-18

前編では、高円寺の小杉湯が90年以上にわたり地域に根ざし、「あり続ける銭湯」として歩んできた歴史や、三代目の平松佑介さん(以下、平松さん)が守ってきた価値観、そして街に銭湯が存在し続ける意義について紹介しました。

▶︎三代目社長が語る、90年続く銭湯「小杉湯」の魅力と価値【インタビュー前編】

平松さんは、東日本大震災やコロナ禍を通じて、銭湯が地域コミュニティや日常の公衆衛生を支える場であることを改めて実感しました。高円寺で日常的に銭湯を利用する人々の姿を見続けるなかで、「銭湯を守り続ける」だけでは足りないのではないかと考えるようになったといいます。

松崎さん 平松さん 対談

後編では、前編で触れた「このままで本当に続けられるのか?」という問いに対する一つの答えとして、2024年4月に開業した小杉湯原宿を深掘りします。

原宿で「日常のお風呂」を生み出す挑戦は、どのように始まったのか。制約の中でも“街の銭湯”であり続けるための工夫とともに、これからの銭湯の可能性についてお届けします。

原宿に誕生した新しい銭湯「小杉湯原宿」とは?

小杉湯原宿は、2024年4月に東急プラザ原宿「ハラカド」地下1階に開業した、新しい銭湯です。日常的に入浴できる場所が少なかった街に、「日常のお風呂」を取り戻す存在として注目されています。

小杉湯 外観 のれん

高円寺の小杉湯と同じ名前を掲げていますが、小杉湯原宿は単なるのれん分けや“支店”とは捉えていません。「原宿という街で、新しくつくる銭湯」として立ち上がったものです。

高円寺で培ってきた考え方を土台にしながらも、街の条件に合わせて、つくり方も運営も新たに組み立てているのが特徴です。

一言で表すなら、小杉湯原宿は「商業施設の地下にありながら、銭湯料金で誰でも利用できる公衆浴場」。観光やショッピングの合間に立ち寄る“非日常”の街の中に、あえて“日常のお風呂”を置くことを目指しています。

開業後、分社化に伴い、小杉湯原宿の事業は、関根江里子さんが代表取締役を務める株式会社ゆあそびへ譲渡されました。現在は、同社が運営しています。

なぜ原宿に銭湯をつくったのか?開業の理由と背景

原宿は観光や商業の街として多くの人が行き交う一方で、生活インフラとしての銭湯は長らくありませんでした。地域住民だけでなく、原宿で働く人にとっても、「街のお風呂」が足りない状態が続いていたのです。

さらに、開業場所である「ハラカド」は、もともと温浴施設を想定していない建物だったそうです。

地下1階という立地、設備面の制約、商業施設としての条件。こうした環境のなかで、小杉湯原宿は、最初から多くの難しさを抱えた挑戦だったといいます。

「どうすれば“街の銭湯”として成立させられるのか」。小杉湯原宿は、そうした課題を抱えた挑戦として始まりました。

小杉湯原宿 内観 看板
小杉湯原宿 番台

街に銭湯が増えてほしいという願い

平松さんが小杉湯を継いでから、次第に抱くようになったのが、「街に銭湯がある状態が、少しずつ増えていったらいい」という願いです。受け継いだ小杉湯を守り続けることは自分の役割である一方、社会のなかで新たな銭湯が生まれていくことを願うようになったといいます。

「“社会に銭湯は必要か”という問いに対して、“求められている”ことを証明したい。そのために、社会のなかで、新たな銭湯が生まれていって欲しいと思っています。」(平松さん)

平松さん 語り

きっかけは2021年7月、コロナ禍の最中に「原宿に銭湯をつくれないか」という相談が届いたことでした。すでに建物の計画が進んでいたなかで、コロナによるテナント撤退が相次ぎ、施設のあり方自体を見直す必要が生まれたといいます。

そこから「街に根ざす商業施設」というコンセプトが立ち上がり、小杉湯原宿の実現へとつながっていきました。

制約と向き合いながら貫いた「街の銭湯」

小杉湯原宿は、商業施設の地下という立地に加え、設備面でも多くの制約があります。たとえばガスが使えない、水の使用量に上限があるなど、一般的な銭湯の前提がそのまま通用しない条件の中での計画だったそうです。

それでも、「原宿に日常のお風呂をつくる」という目的はぶらさず、技術的な工夫と試行錯誤を重ねてきました。

その解決策のひとつが、屋上に給湯設備を置き、地下へ循環させる仕組みです。ノーリツの給湯器を導入することで、安定した湯温管理とお湯の供給を実現し、商業施設の中でも銭湯としての品質を保てる環境を整えていったといいます。

小杉湯原宿 ノーリツ給湯器

また、地下立地のため、銭湯としての区分は「一般公衆浴場」ではなく「その他公衆浴場」になります。けれども小杉湯原宿は、“街の銭湯”としての役割を手放さないために、料金はあえて一般の銭湯と同じ設定を貫きました

開業後、小杉湯原宿にはさまざまな人が訪れています。

  • 夜行バスで早朝に東京へ着き、そのまま立ち寄る人
  • 仕事の合間や、飲み会前に立ち寄る人
  • 原宿で暮らす地元の人

こうした日々の利用が積み重なることで、原宿の街にも「日常のお風呂」が生まれていきます。観光の街である原宿に、生活のリズムとしてのお風呂が少しずつ根づいていく。そうした変化こそが、小杉湯原宿の挑戦の成果と言えるのかもしれません。

増やすことで守る、これからの銭湯のかたち

前編で紹介した高円寺の小杉湯は、90年以上にわたり「あり続ける銭湯」として地域に根ざしてきました。後編で取り上げた小杉湯原宿は、その価値を守るだけでなく、「増やす」という実践を通じて、銭湯の可能性を広げています。

松崎さん 平松さん 対談2

銭湯は、人を温め、心をほぐし、街の暮らしを支える存在です。

平松さんは、若者が「銭湯が好き」「銭湯を残したい」「銭湯で働きたい」と言ってくれることに喜びを感じていると話します。そして、ノーリツの「お風呂は人を幸せにする」という言葉に、強く共感しているとも語っていました。

今日も小杉湯原宿ではお湯が沸き、原宿の街に日常のお風呂が生まれ続けています。

今回のインタビューを通し、小杉湯原宿をはじめ、銭湯文化の未来をつなごうとする人々の取り組みを、おふろ部も一緒に支えていきたいと改めて思いました。

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