日本人はなぜ、こんなにも桜が好きなのか。
ともに生きてきた歴史があるといっても、好きすぎなのではなかろうか。
そう感じつつも、咲いている様子が目にとびこんでくると、やっぱりなんとも穏やかな気持ちになる私です。
トップ画像は、数年前に訪れたニュージーランドで見た桜です。
ご存じのとおり、北半球と南半球の季節は逆なわけで、このときは9月でしたから、なんだかとても嬉しく、得した気分になったことを覚えています。
ところで、日本には昔から、旬の植物をお風呂に浮かべる「季節湯」というものがありますね。
柚子風呂や菖蒲風呂あたりは有名ですが、春の「季節湯」が「桜」であることを、私は最近知りました。
「桜湯」というからには、湯船に花を浮かべるのかな、お湯はほんのりピンク色かな、などと思いを巡らせたのですが、主役は桜の「花」ではなく「枝」でした。
ちょうど、この冬に活けて楽しんだ後の桜の枝があります。
この枝で、たまにはちょっと風流を気取って、「桜湯」に挑戦してみることにします。
桜の種類はなんでも良いそうです。
今回は主に、1月の終わりごろ手に入れて、しばらく目で楽しんだ「啓翁桜(ケイオウザクラ)」の枝を使います。
「啓翁桜 」って、冬のさなかに満開になる、すてきな桜なんですよ。
樹皮をはぎとっていきます。
細い枝だったので、カッターで削ることができました。
なかには硬い枝もあるので、くれぐれも怪我をしないように。
枝先はハサミで5センチくらいにします。
はぎとった樹皮は、1週間ほど陰干ししました。
本来は日干しするようですが、雨が心配だったので。
乾いたときに50グラムあればベストなのですが、ちょっと量が少ないみたい。
ま、大丈夫でしょう。
乾いた樹皮を布の袋に入れます。
次に、水を張ったお鍋に袋ごと入れて、火にかけます。
ぐつぐつ煮ているうちに、薬膳っぽい、独特の香りがしてきました。
桜皮(オウヒ)は、日本では生薬としても珍重されてきたようですが、これはなんだか期待できそうで す。
20分煮出したものがこちら。濃い目の紅茶のような色合いです。
これを、浴槽に布袋ごと入れました。
湿疹などの肌トラブルに効果があるとのこと。
お湯はほのかに色づく程度でしたが、自然の香りが身体を包んでくれました。
まずは目で楽しみ、花が散った後に残った枝も、余すところなく利用する。
先人の知恵はさすがです。
ちょっと手間はかかるけど、春の訪れを存分に感じて、なんともいえない満足感。
肌のメンテナンスもかねてしばらく楽しみたいところですが、自宅の庭に桜の木がない場合は、その枝を手に入れるチャンスもそうそうないわけです。
最近は、生花店に桜が置いてあることもあるようですが、私が住んでいる地域ではなかなか見かけないので、しばらくは、桜の香りの入浴剤をあれこれ楽しむことになりそうです。
そうそう。私の住むまち、静岡県三島市にある「三嶋大社」のしだれ桜は見事ですよ。
いろいろなことが落ち着いた際には、いつか、お立ち寄りください。
よしなつ
お風呂は、快眠のために欠かせない儀式。どんなに忙しくても、バスタブにお湯をためるのが習慣になっています。水が貴重だった時代に始まった日本のお風呂のルーツが「蒸気浴」であることに思いを馳せながら、毎日、湯船に浸かっています。